マンションの大規模修繕の全知識|費用・流れ・注意点を解説

「マンションの大規模修繕、何をどう進めればいいか分からず不安ではありませんか?
本記事では、大規模修繕の流れや費用の相場、施工事例、業者選びのポイントなどを詳しく解説します。
最後まで読めば、大規模修繕をスムーズに進め、住民の満足度を高める方法が分かります。」


目次

1. 大規模修繕マンションとは?基本知識

大規模修繕とは?


大規模修繕とは?

大規模修繕とは、マンションの長期的な維持管理を目的として、外壁、防水、鉄部、共用設備などを一括して改修・補修する工事のことです。一般的に、築12〜15年を目安に計画されることが多く、建物の劣化を防ぎ、資産価値を維持・向上させる重要なメンテナンスの一環です。

なぜ大規模修繕が必要なのか?

マンションは年月が経つにつれ、外壁のひび割れや塗装の劣化、屋上の防水機能低下、鉄部のサビ、シーリング材(コーキング)の劣化などが発生します。これらを放置すると、次のようなリスクが高まります。

外壁の剥がれやタイルの落下 → 住民や通行人に危険
雨漏り・漏水 → 建物内部が腐食し、大規模な補修が必要になる
鉄部の腐食 → バルコニーや階段の手すりが劣化し、強度低下

そのため、計画的な大規模修繕を行い、建物を安全・快適に保つことが求められます


大規模修繕に含まれる主な工事内容

大規模修繕工事には、以下のような建物全体に関わる改修工事が含まれます。

1. 外壁補修・塗装工事

目的:ひび割れや塗装の剥がれを補修し、建物の美観・耐久性を向上させる。

  • ひび割れ補修(クラック補修)
    → 幅0.3mm以上のひび割れは、雨水が入り込み構造体を傷める原因となるため、専用の補修材で補填。
  • タイルの浮き・剥離補修
    → 落下の危険があるため、エポキシ樹脂を注入して固定するか、張り替えを実施。
  • 外壁塗装
    シリコン塗料・フッ素塗料・無機塗料などを使用し、防水性・耐候性を向上

2. 屋上・ベランダ防水工事

目的:雨漏りを防ぎ、建物内部の劣化を防止。

  • ウレタン防水(施工しやすく、10〜12年の耐久性)
  • シート防水(ゴム・塩ビシートで耐久性が高い)
  • FRP防水(強度が高く、バルコニーにも適用)

3. シーリング(コーキング)工事

目的:外壁や窓の隙間を埋め、雨水や風の侵入を防ぐ

  • 劣化したシーリング材を打ち替えることで、防水性能を維持。
  • シーリング材には、ウレタン系・シリコン系・変成シリコン系などがあり、部位ごとに適切なものを選定。

4. 鉄部・金属部の塗装工事

目的サビや腐食を防ぎ、強度を維持する

  • バルコニー手すり・階段・フェンス・エントランス扉などの塗装
  • サビ止め塗料を使用し、耐久性を高める

5. 共用部分の修繕

目的:住民の生活環境を快適に保つ。

廊下・階段の床シート張替え

エレベーター改修(制御装置の更新、老朽化した部品の交換)

照明設備のLED化(電気代削減&環境負荷軽減)


2. 大規模修繕の必要性とタイミング

マンションの大規模修繕は、建物の安全性や耐久性を維持し、資産価値を守るために欠かせない工事です。適切なタイミングで修繕を行わないと、外壁の剥がれや雨漏りが進行し、大規模な補修が必要になるリスクが高まります。では、大規模修繕は何年ごとに必要なのか?また、修繕のサインとなる劣化症状にはどのようなものがあるのでしょうか?


何年ごとに大規模修繕が必要なのか?

一般的に、大規模修繕は築12~15年ごとに行うのが理想的とされています。これは、国土交通省が発表している「長期修繕計画作成ガイドライン」にも基づいた目安です。

修繕周期の目安

修繕タイミング主な修繕内容
築12~15年(1回目)外壁塗装、シーリング打ち替え、防水工事、鉄部塗装
築25~30年(2回目)屋上防水更新、エレベーター改修、給排水管工事
築40年~(3回目以降)構造体の補強、共用設備の大規模改修

最初の大規模修繕(築12〜15年目)では、外壁塗装・シーリング補修・屋上防水が中心ですが、2回目(築25~30年目)以降は、給排水管やエレベーターの改修など、より大掛かりな工事が必要になるケースが増えます。

修繕周期を守らずに放置すると、外壁や防水の劣化が進行し、補修では済まない大規模な工事が必要になるため、結果的に修繕コストが高くなることもあります。


大規模修繕の必要性を示す「劣化のサイン」

修繕のタイミングを見極めるためには、建物に現れる劣化症状を早めにキャッチすることが重要です。以下のような症状が見られた場合は、早急に修繕計画を検討しましょう。

1. 外壁のひび割れ・剥がれ

ひび割れ(クラック)
外壁のひび割れには、次の2種類があります。

  • ヘアークラック(幅0.3mm以下の細いひび割れ)
    → 早急な補修は不要だが、経過観察が必要。放置すると拡大する可能性あり。
  • 構造クラック(幅0.3mm以上の深いひび割れ)
    雨水が浸入し、鉄筋の腐食やコンクリートの爆裂を引き起こすため、早急な補修が必要。

タイルの浮き・剥離
タイル仕上げのマンションでは、タイルの浮きや剥がれが発生することがあります。これは、

  • 建物の経年変化による接着力の低下
  • コンクリートの劣化や膨張収縮の影響
    などが原因で発生し、放置するとタイルが落下し、住民や通行人に危険を及ぼす可能性があります。

2. 雨漏り・水漏れ

屋上・ベランダの防水層の劣化
屋上やベランダは、紫外線や雨風の影響を直接受けるため、防水層が劣化しやすい部分です。
防水劣化のサイン

  • 防水シートのひび割れ・剥がれ
  • ベランダや屋上に水たまりができる
  • 雨が降ると、天井や壁にシミができる

屋上防水が劣化すると、建物内部へ雨水が浸入し、コンクリートや鉄筋が劣化するため、放置せずに早めの補修が必要です。

シーリング(コーキング)の劣化
窓や外壁の継ぎ目に使われるシーリング材(コーキング)の劣化も、雨漏りの原因になります。
シーリング劣化のサイン

  • ひび割れ・剥がれが見られる
  • シーリングが硬化し、弾力がなくなる
  • 隙間ができて水が入り込む

シーリングは、10~15年程度で寿命を迎えるため、大規模修繕の際に打ち替えるのが一般的です。


3. 鉄部のサビ・腐食

バルコニー手すりや階段のサビ
マンションの鉄部(手すり・階段・フェンス・門扉など)は、塗装が劣化するとサビが発生し、強度が低下します。
鉄部の劣化サイン

  • 表面に赤茶色のサビが発生
  • 手すりを触ると粉状のサビが付く(チョーキング現象)
  • サビが進行すると腐食して穴が開く

特に、鉄部が腐食すると落下事故の危険があるため、定期的な塗装メンテナンスが必要です。

エレベーターや給排水管の劣化
築20年以上のマンションでは、エレベーターの部品や給排水管の老朽化も進みます。
設備の劣化サイン

  • エレベーターの動作が遅い・異音がする
  • 給排水管からの水漏れ・赤水の発生
  • 共用部の排水が悪くなる

これらの症状が見られる場合は、専門業者に調査を依頼し、適切なタイミングで設備更新を行うことが重要です。


まとめ|大規模修繕を適切なタイミングで行うために

大規模修繕は、築12~15年ごとに計画的に実施することが理想です。
以下の劣化のサインが見られたら、修繕のタイミングを検討しましょう。

外壁のひび割れ・剥がれ → 放置すると構造に影響
雨漏り・防水劣化 → 建物内部の腐食リスク
鉄部のサビ・腐食 → 安全性低下・落下の危険

早めの修繕計画を立てることで、建物の寿命を延ばし、修繕コストを抑えることができます!


3. 費用相場と見積もりのチェックポイント

  • 一般的な費用相場(H3)
    • 30戸マンション:2,000万円~4,000万円
    • 50戸マンション:3,500万円~6,000万円
    • 100戸マンション:7,000万円~1億円以上
  • 見積もりを取る際の注意点(H3)
    • 相見積もりは3社以上取る
    • 追加費用が発生しないか確認
    • 保証やアフターメンテナンスの有無

4. 工事の流れと期間の目安

  • 工事前の準備(H3)
    • 管理組合での合意形成(住民説明会の実施)
    • 業者選定・契約締結
  • 工事のスケジュール(H3)
    1. 足場設置(1~2週間)
    2. 外壁補修・防水工事(3~6週間)
    3. 塗装工事(4~8週間)
    4. 最終チェック・引き渡し(2週間)
  • 住民への影響と対応策(H3)
    • 騒音や臭い対策(作業時間の調整、低臭塗料の使用)
    • 洗濯物・ベランダの使用制限

5. 施工事例|成功した大規模修繕の実例

事例①:八王子市の築15年マンション(50戸)

  • 施工内容
    • 外壁塗装(シリコン塗料)・屋上防水(ウレタン防水)
  • 工期:約4ヶ月
  • 費用:約4,500万円
  • ポイント
    • 足場設置時にドローン調査を実施し、劣化箇所を正確に把握
    • 遮熱塗料を使用し、夏場の室温上昇を防ぐ

事例②:多摩市の築20年マンション(100戸)

  • 施工内容
    • シーリング打ち替え・鉄部塗装・エレベーター補修
  • 工期:約5ヶ月
  • 費用:約9,000万円
  • ポイント
    • 管理組合と密に連携し、工事スケジュールを住民に共有
    • 住民説明会を事前に実施し、不安を解消

6. よくある失敗と対策

失敗例①:業者選びに失敗し、追加費用が発生

  • 対策:契約前に詳細な見積もりを確認する

失敗例②:住民の合意が取れず、工事が遅延

  • 対策:事前に説明会を開き、合意形成を行う

7. 優良業者の選び方

チェックポイント

  1. 施工実績が豊富か?
    • 過去の大規模修繕の事例を確認
  2. 見積もりが明確か?
    • 一式見積もりではなく、詳細な内訳を提示しているか
  3. 保証・アフターサービスがあるか?
    • 5~10年の保証がある業者が理想

業者選びの際の注意点

❌ 「特別価格」や「今だけ割引」と言う業者には注意
✅ 施工管理技士などの資格を持つスタッフがいる業者を選ぶ


8. まとめ|大規模修繕を成功させるポイント

✅ 12~15年ごとの計画的な修繕が重要
費用は相見積もりで比較し、適正価格を確認
住民合意をしっかり取ることでスムーズに進行
実績豊富な業者を選び、保証内容を確認


9. FAQ(よくある質問)

Q. 大規模修繕の費用はどのくらい?
A. 50戸のマンションで約4,000万円、100戸で約9,000万円が相場です。

Q. 工事中、住民の生活に影響はありますか?
A. 一時的な騒音やベランダ使用制限がありますが、事前説明があればスムーズです。

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